映画が終わらない

映画館の暗がりが落ち着くΩと京アニ好きのαによる与太話

「リズと青い鳥」山田尚子監督の鳥カゴから脱出せよ!

解読「『リズと青い鳥』メイキングVol.4 山田尚子監督インタビュー編」

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先週公開された、映画「リズと青い鳥」の販促映像「『リズと青い鳥』メイキングVol.4 山田尚子監督インタビュー編」皆さんはご覧になられただろうか?山田尚子監督が作品を紹介している大変貴重な映像となっている。

京アニファンもしくは監督ファンとっては簡単には見過ごすことができない映像だ。一見して監督の美しさに心惹かれるが、この動画には作品に関する重大なヒントが隠されているはず・・・。僭越ながら、いち京アニファンとして、こちらの映像の演出に隠れたメッセージを紐解きつつ、「リズと青い鳥」に対してどのような視点を持って取り掛かっているかの一例をお伝えできればと思う。

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まずは監督本人に視点を移してみよう。レンズの中心からやや右側にズレて座っており、体を傾けたり、時々目線を下や横に動かしている「演技」が見て取れる。例えば一般的なインタビュー形式の番組であれば、左側にインタビュアー、右側に監督という配置、もしくは中央にドンと構えて座ってレンズ越しの視聴者に対して正面からメッセージを伝えるのが一般的だろう。一生懸命に作品の魅力を伝えくれている監督が中央から少しズレた位置に座る事で、視聴者は「レイアウトの不安定さ」を感じる。ストレートに言葉通りではなく、監督が発する意味を深読みする必要がありそうだ。

整えられた髪型に注目しよう。前髪は大きく左右に分けて1束真ん中の「希美」型、横と後ろ髪は「みぞれ」型。まるで2人の主人公を体現したかのような髪型のようだ。キャラクターに気持ちを寄せて、作品作りを行ったという事であろうか?

「アクセサリー」に注目すると、まずはネックレス。よくよく見るとMagicという文字を象っている。本作は現実的な女子高生のドラマであり、魔法は出てこない。あえて言えば監督は作品に魔法を掛ける存在といった意味が見いだせる。そしてネックレスは「首輪」から発祥したもので、仮にプレゼントとして受け取った場合は「あなたを繋ぎ止めておきたい」という意味があるようだ。作中の人間関係についてポイントとなりそうなキーワードだ。

次に左耳のイヤリング。イヤリングを片耳だけする事は何ら普通の事である・・・とスルーせずに意味を調べてみよう。女性が左側にイヤリングをしている場合は「レズビアンのアピール」という意味がでてきた。重要なヒントであろう。この作品は2人の主役の少女にそういった関係性があるという事を暗に表現しているのだろうか?

実はこのイヤリングはダブルミーニングとなっている。「リズと青い鳥」にはイヤリングをしたキャラクターが出てこない。そこに取ってつけたような監督のイヤリング。この不整合に対して、ファンなら直感的に「耳」といって連想される作品「聲の形」を思い浮かべるだろう。劇中でも主人公の西宮硝子が左耳にだけ補聴器を付けてるカットもあった。そう、これは「聲の形」ファンへのメッセージではないだろうか?あの夏の大ヒットがあった事で、引き続き監督という大役を任されたよ、「ありがとう?」という・・・。

監督は花柄のワンピースを着ている。京アニファンにはお馴染み、花と言えば「花言葉」だ。残念ながら解像度の問題でハッキリ読み取る事ができないが、オーニソガラム(純粋)、ダリア(移り気・不安定)、コリウス(恋の"のぞみ")あたりの組み合わせではないだろうか。やはり作品を理解する上で役立ちそうなキーワードになっている。 また山田尚子監督作品に特徴的な「足」1があえて映されていない点も監督ファンとしては気になる所である。

まだまだヒントは残されていた。左奥に配置された「リズと青い鳥」のポスターである。分かりやすく半分隠れているではないか。宣伝という目的を鑑みると、適切に情報を伝えるためには全体をレンズに映し出す事の方が適切だ。だが半分隠れてしまっている。「背景」でキャラクターの心情を語る京アニだ、意味が無いハズがない。2

f:id:CobaltBombAO:20180509015037j:plain 希美がみぞれを見ているのは意味ありげ

このポスターを見たことがある方はご存知、隠れている方にはメインキャラクターの1人である「希美」が描かれている。もしかしたら「希美」は隠したくなるほどのネタバレ、ポーズや行動を取ってしまっていて、撮影の時にとっさの判断で隠してしまったのかもしれない。実写映像では撮影時のハプニングを偶然取り込むといった事はままあるそうだ。逆にアニメーション作品は、キャラクターや背景、全ての情報を人間が創り出しているという事が言えるだろう。

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もう一つタイトルの「リズと青い鳥」から「リズと」が消えてしまっていて「青い鳥」という文字列が強調されている。インタビュー映像の冒頭は「鳥が飛び立っている」抽象的なシーンだ。わざわざトップに持ってくる映像に意味が無いわけない。そして「冒頭のシーンで映画全体を説明する」という手法は過去の京アニ作品でも散見されているのだ。

1分ほどのほとんど動きの無いインタビュー映像にこれほどの情報が詰め込まれているという事実に驚愕する。本編90分、演出を1つずつ解読していくと、どれだけ楽しめるだろうか?果たして一つ残らず監督の意図を汲み取って楽しむ事ができるのだろうか・・・?情報の海に、まだ何か秘密が隠されているのではないかとワクワクすると同時に底知れない不安の波が襲ってくる。

リズと青い鳥』リアル脱出ゲーム論

改めて「青い鳥」について考えているとココで1つ灯台下暗し、驚愕の事実を思い出した。TwitterというSNSで日々呟いている我々が実は「青い鳥」ではないか・・・と。監督は以前のインタビューで「傍観者になって2人を撮影した」といった発言をしていた。本作はほぼ学校の中で話が展開する。学校が「鳥かご」であり、生徒たちが「青い鳥」。その様子を「劇場」で傍観する我々も「鳥かご」の中にいると見立てることが出来る。

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これまでのヒントを元に「リズと青い鳥」に隠されたメッセージを自分なりにまとめてみる。劇場という「鳥かご」の中で我々は90分間閉じ込められる。そこでは監督の発言通り、希美とみぞれ2人の「秘密」や「不思議」を観察し、解読する。本当の答えに辿り付いた!と意気揚々と劇場を後に「ツイート」をしてみる。ハッシュタグ「#リズと青い鳥」 のつぶやきを覗き込めば、はるかに深淵な分析を見せつけられ、自分の甘さに怯える。羽根がむしり取られていくような体験をする。飛び立てる事ができるまで視聴を繰り返す事になるが、まるでエンドレスエイト、リアル脱出ゲームを体験しているかのようだ。この映画は山田尚子監督からの挑戦状なのだ。はたして観客は自分なりのゴールにたどり着き無事に「鳥かご」から飛び立つ事ができるのか?

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まとめ

本作をはじめ、京都アニメーションと特に山田尚子監督の映像に対しては、1度見てストーリーを見知った後、このように演出をつぶさに観察し、隠された意味やメッセージを深読みして真の理解へ到達を目指そうとする私の事例をご紹介した。自分のレベルでは残念ながらこれくらいの情報しか読み取る事ができていないが、真の回答を得るにはまだまだ先は長そうだ。インタビュー映像に残された Next Yamada’s Hint は「大ヒット上映中」。興味を持たれた方は、上映期間中に何度でも監督の挑戦を受けてみて欲しい。

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感想

Ω : とても良い映画でした。私は『響け!ユーフォニアム』本編を観ていませんが、本作は一本の映画として完結しているので支障なかったです。言葉とは裏腹な心情を、わずかな仕草、背景、構図で物語る。ストーリーは監督の過去作より淡白になり、細かい演出をひたすら積み重ねていく純度の高いヤバい作品。引用で成り立つ映画が多い中で(それはそれで楽しいのですが)、単品でここまでできるのかと感銘を受けました。

妄想:α / 編集・感想:Ω


  1. ファンが使用している通称「山田レッグTwitterなどで時々使われているのが確認できる。

  2. Ω:メイキング1だと監督がいてポスターも全部映っているから、4は監督のメッセージを伝えるためズームでいくという判断では…